先月(9月)、都内で開かれた子ども食堂です。
運営しているのはボランティアの人たち。
子どもは無料、大人は300円で、月に2回、夕食を提供しています。
栄養バランスを考えたメニュー。
食材のほとんどは寄付でまかなわれています。
利用しているのは、共働きで食事の支度をする余裕のない家庭や、経済的に苦しいシングルマザーの子どもなど、さまざまです。
「おいしい?」
子ども
「おいしい!」
子ども食堂に通っているシングルマザーと、中学1年生の娘です。
娘が小学2年生の時、生活が一変しました。
母親
「限界を通り越して、本当につらかった。」
娘が不登校になり、片ときも母親のそばを離れようとしませんでした。
日中、娘を1人にすることができず、母親は仕事を辞めざるを得ませんでした。
親子で家の中に閉じこもり、生活保護だけに頼る暮らし。
1日あたりの食費は、2人でおよそ700円でした。
母親
「ガスとか電気、最後に止まるのが水道。
止まるのは日常的な感じだった。
食べるものといっても、栄養を考えるとかは全くなくって、空腹を満たす感じ。」
子ども食堂に通う少女
「ほぼ毎日おにぎりなので、ごはんが。
(味付けは)みそと塩なんですけど、それを変えながら食べていた。」
「ごはんの時間は、どんな時間だった?」
子ども食堂に通う少女
「楽しいっていう感情はなかったと思う。」
そんな時、知り合いから聞いたのが「子ども食堂」の存在でした。
熱心に誘われ、久しぶりに外で食事をとったといいます。
子ども食堂に通う少女
「(子ども食堂の)ごはんを食べたときは、すごい心からあたたかくなった。
野菜ってこんなにおいしかったっけって。」
今、この「子ども食堂」を始めたいという人が増えています。
先月下旬、都内で開かれた勉強会には、全国からおよそ20人が参加しました。
英語教室の教師や少年補導員など、地域で子どもたちと接してきた人たちです。
石田真理子さん
「こちらで学習支援をやっています。」
勉強会に参加した石田真理子さんです。
小中学生を対象にした、学習支援のボランティアをしています。
子どもたちと接する中で、食の支援の必要性を強く感じたといいます。
栄養が足りず、口いっぱい口内炎ができている中学生。
給食がない夏休みにはやせていくという小学生。
石田さんは、満足に食事がとれない子どもの背景には、シングルマザーなど家庭の経済的な苦しさがあると考えています。
石田真理子さん
「やっぱりいま非正規とかの問題で、お母さんがいくら働いてもなかなか正規の社員のようにお金がもらえないという問題もあると思う。」
子ども食堂を始めたいという呼びかけに、地元の友人たちが応じました。
「すごく難しいことならできないけれど、なんとなく力を合わせればできるかなって。」
石田さんたちは、1人でも多くの子どもを支えたいと考えています。
毎日の食事をおにぎりだけでしのいでいた、あの少女。
子ども食堂に通うようになってから3年。
食堂は、自信を取り戻すきっかけになった大切な場所だと感じています。
子ども食堂に通う少女
「私もやっていいですか?」
これまで人との関わり合いを避けてきましたが、料理の手伝いを通じて周りの大人たちと話すことができるようになりました。
子ども食堂に通う少女
「不登校で、あまり自分の考えとか発言ができなくて、自分の考えも聞き入れてくれる人がいるのも、いい経験になったんじゃないかな。」
学ぶ意欲を取り戻し、学校にも再び通い始めました。
母親
「(子ども食堂に)行くたびに娘が変わってきて、すごく私自身うれしかった。」
娘の手が離れたことで、母親は再就職することが出来ました。
今年5月からは、生活保護を受けずに暮らしています。
母親
「私たちのことをあたたかく迎えてくれる人がいる、それだけでもどんなに私たちの生活が変わっていったか。
あたたかいごはんのありがたさも半分、でももしかしたらそれ以上に人との関わりの大切さを教えてもらったのが子ども食堂だと思う。」