偶発債務

偶発債務とは、現実にはまだ発生していないが、将来一定の条件が成立した場合に発生する債務の総称である。偶発的に発生し、その負債額を正確に予測できないという特徴がある。手形を裏書譲渡した場合や債務の保証人になった場合などがこれに該当する。発生する可能性が高く、金額を合理的に見積もることができるものには引当金を計上する必要があり、債務として確定した時点で負債に計上される。
偶発債務の記帳には評価勘定を用いて処理する方法と対照勘定を用いて処理する方法とがある。なお偶発債務は潜在的な負債として貸借対照表に注記しなくてはならない。

偶発債務の仕訳例

A社の債務5,000,000円の保証人となったとき、もしA社が債務を返済できない場合はA社に代わって当該債務の返済を行わなければならない。このように現実の債務ではないものの、将来ある条件下において債務になる可能性があるものを偶発債務といい、偶発債務が発生する契約時は以下のように仕訳を行う。なお、この仕訳には偶発債務の発生に対する備忘記録という性格がある。
借方・保証債務見返 5,000,000円/貸方・保証債務 5,000,000円
次に、A社が債務を無事に返済した場合は、偶発債務は消滅されるためこのような仕訳を行う。
借方・保証債務 5,000,000円/貸方・保証債務見返 5,000,000円
A社が返済不能に陥り、A社に代わって現金で債務を返済した場合は、偶発債務が債務として確定するため、反対仕訳によって備忘記録を消去する。またA社に対する求償権が発生するため、未収金勘定によって処理する。
借方・保証債務 5,000,000円 / 貸方・保証債務見返 5,000,000円
   未収金  5,000,000円 /    現金     5,000,000円

会計基準における偶発債務および引当金の取扱い

会計基準における偶発債務および引当金の取扱いは下記の通りである。
偶発債務がある場合には、その内容及び金額を注記しなければならない(財務諸表等規則第 58 条)。偶発債務は、引当金として計上することも考えられるが、発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできないことが明記されている(企業会計原則注解 18)。
偶発債務(債務の保証(債務の保証と同様の効果を有するものを含む。)、係争事件に係る賠償義務その他現実に発生していない債務で、将来において事業の負担となる可能性のあるものをいう。)がある場合には、その内容及び金額を注記しなければならない。ただし、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができる(財務諸表等規則 第 58条)。