2007年4月12日木曜日

ワーキングプア

学習のために、ワーキングプアについて調べてみました。

ワーキングプア
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ワーキング プア(working poor)は、正社員並みにフルタイムで働いても(またはその意思があっても)生活保護水準以下の収入しか得られない就業者のこと。直訳では「働く貧者」だが、働く貧困層と解釈される。アメリカなどにおいては、失業者ではなく就業していることから、失業問題としては把握されていないものの、その賃金水準が低く、また技能の向上や職業上の地位の向上の可能性が低いことから隠れた労働問題として捉えられている。
ここでは主に日本におけるワーキングプアを説明する。
ワーキングプアにあたる所得の世帯数は、日本全国で700万ほどと推定され、深刻な社会問題になりつつある。日本においては、大企業の正社員であっても賃金のうち家族手当や資格手当など社会保障の性質を持つ部分が廃止され、隠れたワーキングプアが顕在化しつつある。
目次[非表示]
1 統計
2 要因
3 メディアの取り上げ
4 構造の不透明さ
5 外国の事例
5.1 ドキュメンタリー
5.2 書籍
6 脚注
7 関連項目
8 その他
9 外部リンク
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[編集] 統計
ワーキングプアの統計としては、総務省の就業構造基本調査が、数字の根拠となる。これに基づいて(推計的に)試算すると、ワーキングプアの量は次の通り[1]と言われている。
1997年 514万世帯 14.4%
2002年 656万世帯 18.7%
2005年 700万世帯~800万世帯 20.0%前後?(推定)

[編集] 要因
バブル経済の崩壊以降、企業は「国際競争のなかにおいて競争力の維持向上を図るため」と称して、コストの削減に注力した。このことは国際競争のある輸出企業だけでなく、内需専門のサービス業でも同様だった。手厚い待遇で雇用される正社員の採用を抑制することによって人員を減らす一方、アルバイトパート契約社員派遣社員など非正規雇用の割合を増やすことによって、総人件費の抑制を図ってきた (2003年6月4日、労働法制の規制緩和で、有期雇用の期間延長・対象拡大の法改正が行われた)。
特に、大企業の製造現場においては請負派遣が広がっていった(2006年には偽装請負が告発された)。こうした傾向は、いわば構造的なものといえ、景気の回復期になっても、極力非正規雇用によってまかなおうとする傾向がある。その意味では景気が回復すれば、自然に解消する問題とは言いがたい。
商業・サービス業においてはもともと非正規雇用の割合が高いが、コンビニエンスストアにみられるように企業間のサービス競争の中で深夜労働など低賃金かつ過酷な勤務も増えてきた。
仮に正職員に就いていても、30歳代を過ぎてから「自分に向いていない」という自発的な離職、あるいは倒産リストラなどの非自発的離職でいったん失業すると、特別な技能国家資格などがあるか、即戦力となれるだけの経験・技量がある場合を除き、なかなか定職に就けない場合が多い。派遣・アルバイト等の経験しかない場合、キャリアとはみなされない傾向が強く、正規職員登用への道は極めて狭い[2]
また、非正規雇用の場合は、スキルアップのための研修の機会にも恵まれない場合が多い。加えて、休暇健康保険労働保険年金福利厚生などの条件が一般には正規職員ほど整ってはおらず、その意味では正規職員ほど企業から庇護されていない。そもそも年金や保険を掛けられるほど報酬も得ていない場合もある。請負や派遣などにおいてはなおさらである。このため、過酷な労働条件には付き物の疾病、事故等の場合には社会保障は満足に受ける事は難しくなりつつある。しかも、その病気やケガを理由に非正規労働者を解雇するという企業も存在している。一方、偽装請負が発覚した企業の中には、一部の労働者に正社員雇用の門戸を開き始めたところもある。
日本共産党社会民主党など一部の野党はこのような実態は明確な労働基準法違反であるとして抗議している。
ワーキングプアの増加の背景には、こうした現代日本の厳しい雇用構造が関係しているものと考えられている。

[編集] メディアの取り上げ
この問題に関しては、2006年7月23日21時からNHK総合テレビで放送された「NHKスペシャル」で取り上げられたほか、各マスメディアが報じることで近年認識されるようになった。

[編集] 構造の不透明さ
アメリカでは貧困を示す概念の一つとして公式な場でも言及されることがあるものの、日本においては公的に言及される用語ではないため、ワイドショーによって扇動的に取り上げられているに過ぎないのではないかという疑問が示されることがある。また、格差社会ムーブメントとの類似性を指摘する声もある。
また、ワーキングプアとは「働けば働くほど支出が増えて貧しくなる状態」とも言える。これは、完全な貧困層であれば受けられる福祉サービスが「努力して働いたため」に収入が増え、受給資格を失うために起こる逆転現象である。こういった場合、統計上は「貧困層が減少した」ように見えるため、実情が外側から分かりにくく、「誰がワーキングプアなのか」が不透明になるというジレンマがある。
上記の問題が起こり得る原因の一つに、日本の最低賃金の保障額が「平均賃金の約34%(各都道府県別に異なるので近似値)」であり(ヨーロッパ諸国は約50%)、単純計算では生活保護以下の家計水準を迫られているという現実がある。これは国民生活の保護の機能が弱いアメリカ合衆国でも類似した構造が見られる

[編集] 外国の事例
外国では一般に、ワーキングプアの定義について「労働力人口のうち貧困状態の者」とされている。先進国の例では、アメリカ労働省労働統計局(BLS)が「1年間のうち少なくとも27週間、職に就くか、あるいは職を探すかしていながら、その収入が公的な貧困線未満の者」としている[1]。また、途上国の例では、国際労働機関が「労働力人口のうち一日の可処分所得が1US$以下の者」としている。[2]

[編集] ドキュメンタリー
モーガン・スパーロックの30デイズ 第1話:最低賃金で30日間(WOWOW
地球特派員2006「アメリカ 格差社会の底辺で~ワーキングプアの現実~」(2006年11月19日 NHKBShi12月3日 NHKBS1
BS世界のドキュメンタリー「貧困へのスパイラル」▽アメリカ格差社会の実態 前後編(NHKBS1。2005年アメリカ、パブリックポリシープロダクションズ/en:WGBH制作)
このドキュメンタリーは3年以上にわたり、4つの家族に密着して取材している。

[編集] 書籍
en:Nickel and Dimed2001年5月 著者:en:Barbara Ehrenreich
『The Working Poor: Invisible In America』2004年2月 著者:en:David K. Shipler
『ワーキング・プア - アメリカの下層社会』(デイヴィッド・K・シプラー著、森岡孝二・川人博・肥田美佐子訳、岩波書店) - 上記"The Working Poor: Invisible In America"の日本語訳

[編集] 脚注
^ 朝日新聞2006年11月04日・週末特集be-b(青色)の「be word」という記事による。執筆者は後藤道夫・都留文科大教授。元の正式論文は、“後藤道夫「過労をまぬがれても待っている「貧困」」、『週刊エコノミスト』2006年7月25日号、P34~36”関連情報としては、国税庁の「民間給与の実態調査結果」というWebページも参考になる。これによると、年収200万円以下の層は、2000年以降では増える一方であるが、特に2004年に急激に増えている。
^ 正社員になりにくいことの出典としては、朝日新聞2006年11月04日・週末特集be-b(青色)の特集記事がある。渋谷のヤング・ハローワークの話。「即戦力を求めがちな企業側はアルバイト経験しかない人材を好まない傾向」があり、指導官が「未経験者でも育ててゆく姿勢でもう少し門を広げてほしい」と述べている。これは出典の一つで、同趣旨の記事は多く報道されている。単行本でも、岩波新書「格差社会」や「労働ダンピング」などに同趣旨の話がある

[編集] 関連項目
ニート
フリーター
プレカリアート
オンコールワーカー
ホームレス
ネットカフェ難民
格差社会
下流社会
雇用公共職業安定所労働基準監督署
貧困
消費者金融
自己破産
責任#自己責任社会保障生活保護
ブラック企業
強制労働
働けば自由になる
貧困の文化

[編集] その他
世界で起きているテロの背景には、貧困差別などの社会問題があると言われている。
かの石川啄木の詩の一節に「働けど働けど我が暮らし楽にならざりじっと手を見る」があるが、ワーキングプアは暮らしが楽になるどころか、逆に出費が増加してますます困窮する事例も多々あることから、この一節に例えることもできる。

[編集] 外部リンク
NHKスペシャル|ワーキングプア~働いても働いても豊かになれない~
NHKスペシャル|ワーキングプアⅡ 努力すれば抜け出せますか
シリーズ生活保護(1)生活保護が受けられない~ワーキングプアの苦闘~