2007年10月19日金曜日

UAWとビッグ3

日本の自動車メーカー、“我が世の春”は終わる米ビッグスリーと全米自動車労組の協約改定後を読む2007年10月18日 木曜日 J・W・チャイ ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーが全米自動車労働組合(UAW)と今後4年間にわたる新労使協約に調印することで合意に達した。フォード・モーターも近いうちに、同じような内容で合意に達すると予想されている。その結果、日本の自動車メーカーは、米国市場において、これまでのように安穏とはできなくなるだろう。 なぜなら、今回の協約改定によって、日本勢とビッグスリーのコスト競争力の格差が確実に詰まるからだ。ミシガン大学・自動車研究所のデビット・コール教授によれば、これまでGMはトヨタ自動車に比べ、医療費や年金などの支出で、クルマ1台当たり約4000ドルの負担増を強いられていた。しかし、今回の改定によって、それが約800ドルまで縮まるという。トヨタとGM、時給は逆転する 今回の合意内容のうち、ビッグスリーの経営に与える影響が最も大きいのは、「任意従業員福利厚生基金(VEBA)」の設立が決まったことだ。GMを例に取ると、2010年までに退職者やその家族に対する医療費の支払い義務をUAWの基金に完全に移管することになった。  GMはこの基金に総額359億ドルの資金拠出を余儀なくされるが、その代わり、長年苦しめられてきた医療費負担から解放される。厳密に言えば、今後、基金が底を突いた場合、GMは訴訟も覚悟しなければならないので、追加負担のリスクが完全に無くなったとは言えない。 しかし、日本勢に比べ、はるかに大量の退職者を抱えるGMにとって、VEBA設立にこぎ着けた意味は大きい。現在510億ドルと試算されている医療費債務のうち、359億ドルがバランスシートから消えて無くなるからだ。格付け大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスはさっそく、GMの長期債格付け見通しを「ネガティブ」から「ポジティブ」に変更した。 また、賃金については、組み立てラインなど中核業務で働く社員と、部品の仕分けや清掃といった非中核業務で働く社員の時給を分ける「2段階賃金制度」を導入することになった。その結果、新規従業員などで構成される非中核業務の時給は25.7ドルと、現行組合員のおよそ半分になる。現在でもトヨタ自動車の米国工場はGMと遜色ない時給を出しているので、今回の合意によって、少なくとも新規従業員については、トヨタとGMは時給が逆転する。それにGMは今後、猛烈な勢いで従業員の入れ替えを進めようとしている。現在、約7万3500人とされるGMの時間給従業員のうち、65%が今後4年以内に定年退職または早期退職の対象になる見込みだ。つまり2001年の段階では、かなりの割合で時給の安い従業員が工場を占めることになる。こうなると、日本の自動車メーカーも抜本的に賃金体系を見直す必要が生じるだろう。 GMは交渉の過程で、UAW加盟の完成車17工場のうち16工場の操業継続を確約した。ただ、これも合意内容をよく見てみると、継続を確約しているのは、期間の長い工場でも2012年までであり、その後の保証はない。裏を返せば、約束の期限を過ぎれば、採算の悪い工場の閉鎖は十分にあり得る。 以上の合意内容を踏まえて、今後、GMの経営の何が変わるかと言えば、詰まるところそれは、“まともな経営”ができるようになるということだ。これまでGMは、売れないと分かっているクルマでも、工場の操業を維持するために生産を続けざるを得なかった。 なぜなら、GMとUAWの協約では、たとえ工場を閉鎖しても、一時解雇した従業員にはおよそ9割の給与を払わなければならないし、退職後も医療費を保証し続けなければならなかった。それに比べれば、たとえ売れないクルマでも作り続けて従業員を働かせておいた方が、赤字の額が少なくて済んだ。しかし、今回の協約改定によって、そんな“くびき”から解放される。米国のレンタカー代が高くなる? 余談になるが、今回のビッグスリーとUAWの交渉結果に、戦々恐々としているのがレンタカー業界である。米国のレンタカー会社は上述したようなビッグスリーの事情があって、過剰となった生産車種を格安で調達できた。ところが今後はそれが徐々に難しくなる。  米国のレンタカー代は他国に比べて安いと言われるが、それもビッグスリーの過剰な生産があったからこそ。今後は消費者もその恩恵にはあずかれなくなるかもしれない。 いずれにせよ、ビッグスリーにとって、今回の合意の意味は大きい。これまでのビッグスリーの最大の弱みは、売れないクルマを多額のインセンティブを付けて売ったり、レンタカー会社に流したりすることで、ブランドイメージを傷つけていたことにあった。  その結果、消費者はますますビッグスリーの車種を買わなくなり、それを補うために、さらに強引な販売手法に走るという悪循環に陥っていた。今回の協約改定は、そんな悪循環を断ち切るための第一歩と言える。もちろん、日本車との開発力の差がすぐに縮まるわけではない。ただ、これまでのように日本勢と戦う前から、コスト面で大きな不利を背負う状況ではなくなる。私は一部の車種では日本勢が相当、苦しむことになると見ている。その典型がピックアップトラックだろう。 この分野では、トヨタが今年2月に全面改良した「タンドラ」で販売攻勢に出ている。今のところ販売台数は好調に推移しているようだが、地域によっては3000~5000ドルの販売奨励金、あるいはオートローンを組む際の金利を当初の48カ月間はゼロに据え置くといった、高水準のインセンティブを出している。それだけトヨタも、この分野を手強いと判断している証しだろう。 いくら日本の製造業に技術力があると言っても、軍事関連設備や航空機分野で、日本が米国を容易に追い抜くことはできない。それは第2次世界大戦以降、戦争をしていない日本と、その後も世界各地で継続的に戦争をしてきた米国の差である。 少々荒っぽい例えになったが、要するに、商品力は実際に使われて初めて磨かれるということだ。ピックアップトラックは米国市場で育てられてきた商品であり、この分野でのビッグスリーの長年の経験は軽視できない。現にピックアップ市場において現在、最も勢いがあるのは、GMの新型プラットホームを使った新車だ。民主党政権下で円安は容認されない それに今後は、為替問題が日本の自動車メーカーを悩ませる可能性がある。来年、民主党が政権を取って、ホワイトハウスと議会の両方の主導権を握れば、現在の円安は容認されないだろう。民主党では、カール・レビン上院議員やジョン・ディンゲル下院議員など、ミシガン州選出の「対日強硬論者」が力を持っている。彼らが為替や雇用問題に火をつける可能性がある。 これまで日本の自動車メーカーが、米国市場で“我が世の春”を謳歌できたのは、円安とビッグスリーの医療費・年金負担に助けられていたことが大きい。今後はこうした優位性が薄らいでいく。ビッグスリーとUAWの協約改定後に想定される事態は何か。 それは日本勢がこれまでよりも厳しい競争にさらされ、収益を圧迫される姿かもしれない。

トヨタの信頼性の低下

米消費者団体誌、トヨタ車の信頼性低下を指摘http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071017-00000820-reu-bus_all10月17日13時10分配信 ロイター [デトロイト 16日 ロイター] 米消費者団体誌「コンシューマー・リポート」は16日、新車の信頼性調査でトヨタ自動車の2車種が「平均以下」と評価されたことを受け、同社の全新型車を推薦する慣行を停止することを明らかにした。 トヨタをはじめとする日系自動車メーカーの新車は近年、同調査で「最も信頼できる車種」の大部分を占めてきた。 今回の調査でトヨタは、ホンダと富士重工業のスバルに次いで3位となったものの、トヨタ製2車種の信頼性は「平均以下」と評価された。 同誌はこれまで、トヨタの新型車については同社の優れた実績を背景に推薦してきたが、今後は「信頼性のデータなしでは推薦しない」方針を示した。 毎年発表される同調査は、消費者への影響が大きいほか、大手自動車メーカーも品質面でのパフォーマンスを示すものとして利用している。 トヨタの広報担当者はロイターに対し「(平均以下と評価された)これらの車種について、顧客の不満を示す社内データはない」と述べ、同誌の調査結果を分析する意向を示した。-----------------------------------------------------------------------◎トヨタ車、信頼性わずかに低下?=米誌調査10/16/2007(c) 2007 時事通信社*【ニューヨーク16日時事】米有力消費者情報誌コンシューマー・リポーツが16日発表した、最も信頼性が高い新車39車種のうち、日本車が全体の約8割、31車種を占めた。一方で、同時に公表された最も信頼性の低い車に、前年ゼロだったトヨタ自動車から大型ピックアップトラック「タンドラ」の一部車種が選ばれた。同誌は声明で「数年間薄れることがなかったトヨタ車の信頼性がわずかに下がった」と指摘した。 信頼性が高い車をメーカー別に見ると、トヨタが17車種で前年に続きトップを維持。以下、ホンダ7車種、日産自動車3車種、富士重工業2車種と続き、マツダと三菱自動車も1車種ずつ選ばれた。米国車は、フォード・モーターの3車種とゼネラル・モーターズ1車種にとどまった。 一方、信頼性の低い車は44車種で、米国勢が20車種と半分近かった。日本車は日産が4車種、トヨタとマツダが各1車種だった。 この調査は、同誌の読者らが保有する130万台近くの2005-07年型車が対象で、その結果を基に08年型車の信頼性を予想した。