2016年1月3日日曜日

奨学金という名の消費者金融

 1月3日(日)付けの中日新聞の記事です。学ぶ権利すら保障されていない日本は先進国といえるのでしょうか?生涯借金に苦しむ前途ある若者の
存在です。給付型奨学金こそ必要です。

奨学金の返還訴訟が激増 年5000件超に、支援機構が回収強化

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 大学や大学院、専門学校生らの約四割が利用している日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金貸与事業で、返還が滞った利用者や親などに残額の一括返還を求める訴訟が激増していることが分かった。機構が発足した二〇〇四年度の五十八件に対し、一二年度は百倍を超える六千百九十三件に上った。非正規労働の増加や就職難で経済的に苦しむ若者が増える一方で、機構が債権回収を強化した実態を示している。
 機構によると、訴訟は月賦による奨学金の支払いが九カ月以上滞った利用者に一括返還を求めたうえで、督促に応じなかった利用者を相手に起こしている。提訴後に支払いの再開に同意して和解するケースが多いが、返還できずに自己破産した場合は親などの連帯保証人、親戚などの保証人に請求が回るという。
 提訴の対象は当初、滞納が一年以上に及んだ利用者だったが、「奨学金の返還促進に関する有識者会議」が〇八年六月、対象を延滞九カ月に早期化することを含む回収強化策を提言。これにより〇九年度は四千二百三十三件と、前年度の約三倍に増えた。
 失業や病気、災害などで適用される返還猶予期間が五年から十年に延長された一四年度は五千三十九件で、ピークの一二年度から千百五十四件減ったが、機構発足時との比較では依然高水準が続いている。連帯保証人や保証人に一括返還を求めた訴訟は、過去五年で四千六十四件あった。
 機構は三カ月以上の滞納者の個人情報を全国銀行個人信用情報センター(東京)に登録。「ブラックリスト入り」ともいわれ、登録を開始した一〇年度の四千四百六十九件が一四年度には約四倍の一万七千二百七十九件に増えた。過去五年間の総数は五万一千五百七十四件。延滞を解消しても五年間は登録が消えず、住宅や自動車のローン、クレジットカードなどの審査が通りづらくなる恐れがある。
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 返還訴訟の増加などについて、機構の遠藤勝裕理事長は「奨学金の貸与に税金が入っている以上、回収しないわけにはいかない。返還猶予などの救済策も用意している」と説明。一方、奨学金問題対策全国会議(東京)の事務局長を務める岩重佳治弁護士は「将来の返還能力を審査せず貸しているのに、返すときになって強い措置をとるのはおかしい」と指摘している。
 機構の奨学金をめぐっては文部科学省が現在、利用者の卒業後の年収をマイナンバー制度で把握して返還額を柔軟に変える「所得連動返還型」の導入を検討している。これに対して返還困難者の支援団体は、主要国の中で日本にだけ制度がない完全支給の「給付型」の早期導入を求めている。