2016年2月12日金曜日

サウジアラビア王家の内紛


田中宇の国際ニュース解説からです
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★サウジアラビア王家の内紛
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 最近、サウジアラビア王家の内紛がひどくなっている。内紛の中心は、モハ
メド・ナイーフ皇太子と、モハメド・サルマン副皇太子という、王家の若手世
代の筆頭である2人の「モハメド」の権力闘争で、どちらが次の国王になるか
をめぐる戦いでもある。現在の継承権は、副皇太子の方が低位だが、副皇太子
はサルマン・アブドルアジズ現国王の息子だ。国王は、暗殺など何らかの方法
でナイーフ皇太子を外し、自分の息子を皇太子に格上げして、王位を継承させ
ようとしていると指摘されている。米当局筋によると、皇太子の交代は、今夏
に行われそうだという。

http://www.thesundaytimes.co.uk/sto/news/world_news/Asia/article1657098.ece
`Saudi king `plots to bypass nephew' in handover of crown

 ロシア発の情報によると、ナイーフ皇太子は、国防相でもあるサルマン副皇
太子が、軍を動かして自分を暗殺するのでないかと恐れている。諜報機関を握
るナイーフは、サルマンら王族たちの電話をさかんに盗聴しているという。内
務相でもあるナイーフは、国内の諸部族の族長と連絡をとり、部族を動かして
治安を悪化させ、それを副皇太子や国王のせいにすることで、自分が外される
ことを防ごうとしている。現国王が就任したとたんに起きたイエメンとの戦争
や、今年初めのシーア派のニムル師の処刑は、ナイーフの策に沿っている感じだ。

http://en.farsnews.com/newstext.aspx?nn=13941111001542
Russian Publication: Mohammed Bin Salman to Use Miltary Force to Topple Would-Be King Bin Nayef

【サウジの王族などの人名は「自分の名前・父親の名前・(祖父の名前・曽祖父の名前・・・)」という構造になっており、ナイーフやサルマンは父親の名前だが、彼ら自身の名前で呼ぶと2人とも「モハメド」になってしまうので、ここではナイーフ皇太子、サルマン副皇太子(もしくは父親のサルマン国王と区別する意味で「若いサルマン」)と呼ぶ。サウジなどでは、頭文字をとってナイーフをMbN、サルマンをMbSと書くが、日本ではアルファベットの羅列で識別するのが苦手な人が多いので使わない】

 この内紛は「親馬鹿な国王のわがまま」を超えた、サウジの国家戦略の行方
をめぐる政争である。米欧アラブのメディアには、プロパガンダを大量に含ん
でいそうな各種の見方が散乱しており、どれが事実か見極めにくいが、私が見
るところ、ナイーフ皇太子が対米従属派で、サルマン副皇太子(と父親のサル
マン国王)は対米自立派であり、米国の覇権が低下するなか、サウジがどこま
で米国の支配につき合い続けるかという国家戦略をめぐる戦いだ。

 これまで数代にわたり、サウジの国王は80歳前後の高齢の兄弟(スデイリ・
セブン)が順番に数年ずつ継承してきた。だが今、ナイーフ皇太子は56歳、
サルマン副皇太子は弱冠30歳だ。国王は死ぬまで王位を維持できる。次の
国王は20-50年、王位を保持しうる。ナイーフとサルマンのどちらかしか
国王になれないだろう。ナイーフが次期国王になると、日本と同様、衰退する
米国にどこまでも付き従っていく可能性が高い。対照的に、若いサルマンが王
位を継ぐ、サウジは対米自立していき、多極型の世界体制のもとで、中露やイ
ランと並ぶ地域大国として振る舞う傾向を強めるだろう。

 ナイーフ皇太子は、米国諜報界とのつながりが強く、サウジ政府の治安担当
の最高責任者でもあり、米国主導のテロ戦争をサウジ側で率いてきた「軍産複
合体」の一員だ。皇太子は若い時に米国に留学してCIAなどと親しくして以
来、サウジ王室屈指の親米派で、2012年に内相に就任した時は「最も親米
的な閣僚」と米マスコミから賞賛された。

http://en.wikipedia.org/wiki/Muhammad_bin_Nayef
Muhammad bin Nayef   From Wikipedia

 1月2日に行われたサウジのシーア派の宗教指導者ニムル師の処刑を決めた
のも、政府の治安担当者であるナイーフ皇太子だとされている。軍産複合体が
イランに対してかけてきた核兵器開発の濡れ衣をオバマ大統領が解いてしまい、
経済制裁を解除されたイランが台頭し始める中で、中東のスンニ対シーアの
対立を再扇動したい軍産複合体を意を受けた処刑だった。ニムルの支持者たち
は、反政府デモでナイーフ皇太子を非難するスローガンを叫んでいる。

http://tanakanews.com/160106saudi.php
◆イランとサウジの接近を妨害したシーア派処刑

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/0d299e2e-b533-11e5-8358-9a82b43f6b2f.html
Mohammed bin Nayef, Saudi strong man in a power struggle

 ナイーフ皇太子の父親であるナイーフ・アブドルアジズは、副皇太子の父で
ある現国王の兄で、現国王が副皇太子だった時に皇太子だったが、2012年
に死去したため、現国王が皇太子に昇格し、その後昨年1月に国王になった。
サルマン副皇太子は、父親の国王が副皇太子になった11年から父親の側近と
して頭角を現し、経済運営などを手掛けた。父親が国王に即位した後、息子は
副皇太子に取り立てられ、経済政策の決定権を握る「経済開発評議会」の議長
に就任した。副皇太子は、米国留学組の皇太子と対照的に、国内のリヤド大学
を卒業しており、留学していない。

http://en.wikipedia.org/wiki/Mohammad_bin_Salman_Al_Saud
Mohammad bin Salman Al Saud   From Wikipedia

 昨年5月には、それまで石油省の傘下にあった国王石油会社アラムコが、石
油省から分離されて政府直轄になり、副皇太子が議長をつとめる評議会がアラ
ムコの経営の最高決定権を握ることになった。アラムコは、サウジの国家収入
の9割を稼ぎ出している。アラムコを掌握したことで、副皇太子は、財政面か
らサウジを牛耳ることになった。

http://www.platts.com/latest-news/oil/dubai/analysis-king-salman-consolidates-family-grip-26082090
King Salman consolidates family grip on Saudi power and Aramco

 国王が、息子の副皇太子にアラムコを握らせたことは、対米関係上、大きな
意味がある。サウジは14年秋から、原油の国際相場を下落させる政策を続け
ている。これは、米国のシェール石油産業をつぶし、世界の石油業界でのサウ
ジの支配力を守るための策略だ。巨額の債券発行で自転車操業しているシェー
ル石油産業の崩壊は、米国のジャンク債市場と債券金融システムの崩壊につな
がる。

http://tanakanews.com/150519saudi.htm
米サウジ戦争としての原油安の長期化

http://tanakanews.com/141130oil.php
米シェール革命を潰すOPECサウジ

 そのため、米国の石油産業と金融界は、あらゆる政治力を使ってサウジ王室
に圧力をかけ、サウジに原油安攻勢をやめさせようとした。それに抵抗するた
めのサウジ国王の策が、息子の副皇太子に個人的にアラムコを握らせ、王室内
の他の勢力が米国の意を受けてアラムコに圧力をかけられないようにした。サ
ルマン親子(サルマン国王とサルマン副皇太子)は、米国の圧力に抵抗しつつ、
米国の覇権を倒そうとし続けている。

http://nationalinterest.org/feature/the-prince-politics-behind-saudi-aramco-ipo-14909
The Prince and Politics Behind a Saudi Aramco IPO

 サルマン副皇太子は今年に入り、アラムコの資本の5%程度を数か月内に株
式上場する構想を表明した。これは、長引く原油安でサウジ政府自身の収入が
減少し、財政赤字が増大しているのを穴埋めするのが目的だ。

http://tanakanews.com/160113bank.php
◆ドルの魔力が解けてきた

 サウジは王政だが独裁的でなく、総勢3万人といわれる王族たちが合従連衡
して構成する雑多な勢力が、国王や執政担当者(今は副皇太子と皇太子)に圧
力をかけて政治を動かす実質的な合議制が続いてきた。王室内の諸派の中には、
米国の軍産や石油業界、金融界とつながった勢力が多い。サルマン親子は「米
国に楯突いて原油安を続けるから財政難になる。対米従属に戻れ」と言ってく
る諸勢力の批判をかわすため、アラムコの株式上場を計画している。

http://www.economist.com/news/middle-east-and-africa/21685529-biggest-oil-all-saudi-arabia-considering-ipo-aramco-probably
Saudi Arabia is considering an IPO of Aramco, probably the world's most valuable company

 サルマン親子が権力を握り続ける限り、サウジは米国が金融崩壊を起こすま
で原油安を続ける。逆に、ナイーフが皇太子の座を守って国王になり、サルマ
ン親子から権力を奪取したら、サウジは減産して原油相場を再上昇させ、米国
のシェール産業と金融システムを救うだろう。

http://www.institutionalinvestor.com/article/3524042/banking-and-capital-markets-emerging-markets/saudi-prince-mohammed-bin-salman-aims-to-shake-up-the-kingdom.html
Saudi Prince Mohammed bin-Salman Aims to Shake Up the Kingdom

 サウジ王政の上層部に深刻な暗闘がありそうなことは、以前から感じられて
いた。近年のサウジは、対米従属と米国離れという、相反する2方向の戦略を
バラバラにやっている。兵器の多くを米国から買ったり、米国と一緒にシリア
のアサド政権を倒そうとする一方で、米国の金融崩壊につながるシェール石油
つぶしの原油相場の引き下ろし戦略を続けている。中国やロシアに接近する一
方で、中露と並ぶ多極化勢力であるイランとの敵対を扇動したり、イエメンの
シーア派勢力に戦争を仕掛けたりしている。

http://tanakanews.com/131024saudi.php
米国を見限ったサウジアラビア

http://tanakanews.com/140110mideast.php
米国依存脱却で揺れるサウジアラビア

 だが、サウジ上層部の暗闘が誰と誰の戦いなのか、以前は判然としなかった。
状況が変わったのは、今年に入ってからだ。米英やロシアのメディアが、諜報
機関などからの情報をもとに、ナイーフ皇太子とサルマン副皇太子が対立して
いることを報じるようになった。米NBCの記事は「ナイーフ皇太子は米国に
愛されているが、そのことが王室内の戦いで皇太子に有利になるとは限らない。
米国は皇太子を応援しすぎており、これは逆効果かもしれない。すでに皇太子
は、サルマン副皇太子の許可を得ないと国王に会えない態勢を敷かれている」
と書いている。英インデペンデント紙は、副皇太子を「親の七光りしかない無
能者」と酷評している。日本のマスコミが対米自立派の鳩山元首相を酷評して
いた時を思わせる、軍産系らしいプロパガンダだ。

http://www.nbcnews.com/news/world/royal-pains-two-princes-vie-power-saudi-arabia-make-mess-n502271
Royal Pains: Two Princes Vie for Power in Saudi Arabia, Make a Mess

http://www.independent.co.uk/voices/the-most-dangerous-man-in-the-world-a6803191.html
The most dangerous man in the world?

http://sputniknews.com/middleeast/20160202/1034088377/saudi-palace-coup-analysis.html
Battle Royal: The Prospects of a Palace Coup in Saudi Arabia

 イランがサウジのシーア派から得た情報によると、1月下旬、中国の習近平
主席がサウジを訪問した際、国王や副皇太子と会談したが、ナイーフ皇太子は
習近平と会うことを拒否した。これが事実とすると、ナイーフが対米従属派な
ので、米国が敵視する中国の首脳との会談を拒否したという解釈ができる。対
照的に、サルマン副皇太子は、中国と並んで多極化の雄であるロシアのプーチ
ン政権と親しく、昨年サンクトペテルブルグの経済サミットにサウジを代表し
て財界を率いて参加したのは若いサルマンだった。

http://en.farsnews.com/newstext.aspx?nn=13941103000199
Chinese Furious after Saudi Crown Prince Shuns Meeting with President Xi

 若いサルマンは、父親が国王に就任するとともに国防相に就任している。経
済の大黒柱であるアラムコを支配する経済開発評議会の議長もしている彼は、
サウジの安全保障と経済の両方を一手に握る独裁的な権力者になっている。も
し今後、彼がナイーフを押しのけて皇太子になり、父親の死とともに国王にな
ると、これまでの合議制のサウジ王政では考えられなかったような独裁的な国
王になり、サウジ王政の権力は分散型から集中型に転換する。サウジ王室上層
部で対米自立の国策を目指す勢力は、50年間やれる若いサルマンを独裁的な
国王にすることで、王室内の対米従属派をずっと排除し、サウジの国家戦略を
恒久的に対米自立、多極型対応にしたいのだと考えられる。

 サウジ王政は従来、権力構造が合議制なので、王室内部の騙し合いや目くら
まし戦略が優先され、国家的な意志を明確にできなかった。しかし今後、若い
サルマンが独裁的な国王になると、明確な国家戦略を世界に向かって打ち出す
傾向を強めそうだ。米国覇権下でプロパガンダを担う米欧マスコミや国際人権
団体は、サウジの独裁体制を批判し続けるだろう。しかし、彼らの真の狙いは
サウジの対米自立を妨害することであり、サウジの人々の権利を守ってやるこ
とは二の次だ。

 最近、サルマン親子がナイーフを追い落とそうとする政争が激しくなるとと
もに、米英などのマスコミが、この政争についてプロパガンダと思える歪曲さ
れた解説をさかんに流すようになった。その主なものは、サルマン副皇太子の
せいでサウジがひどいことになっているという見方だ。たとえば、イエメンと
の泥沼の戦争を起こしたのは、国防相になったばかりのサルマンだったという
見方がある。だが、若いサルマンがイエメンと戦争したいと考えたのなら、国
防相になったばかりの時でなく、国防相になった後、数か月かけて軍内をある
程度掌握してから開戦するはずだ。

 そもそもイエメン戦争は、米国が起こした戦争だ。以前の記事に書いたよう
に、米当局は昨年3月、イエメンでフーシ派が首都サナアを掌握し、それまで
のハディ大統領から権力を奪ったまさにその時に、ハディ政権に支援してあっ
た5億ドル分の兵器を放置したままイエメンから米外交団を総撤退させ、フー
シ派に兵器がわたるようにした。フーシ派が急に戦闘機やミサイルを手に入れ、
隣接するサウジを攻撃できる力を持ったため、サウジはフーシ派が態勢を整え
る前に、急いでイエメンを空爆し、米国が放置していった戦闘機やミサイルを
破壊しなければならなくなった。米国は、昨年1月にサルマン父が国王になり、
息子が国防相になって、サウジが非米的なサルマン親子の体制になった直後に、
この展開を引き起こしている。

http://tanakanews.com/150331yemen.php
◆米国に相談せずイエメンを空爆したサウジ

 イエメン戦争は、米国がサウジの対米自立を阻止するために起こした戦争だ。
サルマンが若気の至りでイエメンに戦争を仕掛けたという「解説」は、軍産傘
下のマスコミによる、善悪をねじ曲げたプロパガンダである。

http://www.ndtv.com/world-news/the-young-saudi-royal-at-the-heart-of-the-middle-easts-great-power-struggle-1265633
The Young Saudi Royal At The Heart Of The Middle East's Great Power Struggle

 昨年12月には、ドイツの諜報機関BNDが、サルマン親子を酷評する報告
書を作り、マスコミに流した。報告書は、イエメン戦争を起こしたのも、イラ
ンとの敵対を扇動して中東の混乱に拍車をかけているのもサルマン親子だと書
いている。私から見ると、イエメン戦争やイランとの敵対を起こしているサウ
ジ国内の勢力は、サルマン親子でなく、サルマンの対米自立戦略をつぶしたい
ナイーフ皇太子らの方だ。この報告書は、サルマン親子に濡れ衣をかけること
でドイツやEUとサウジの関係を悪化させたいと考えた米英の軍事諜報筋(国
防総省やCIA、MI6)が作ってBNDに出させた感じがする。

http://www.dw.com/en/german-spy-agency-warns-of-saudi-intervention-destabilizing-arab-world/a-18889664
German spy agency warns of Saudi intervention destabilizing Arab world

http://www.scoop.co.nz/stories/HL1602/S00003/saudi-arabia-stoking-sectarian-conflict.htm
Saudi Arabia Stoking Sectarian Conflict

 この報告書が報じられた後、ドイツ政府が自らの傘下であるBNDを叱責す
るという異例な展開になった。ドイツが率いるEUは、中東で対米自立的な外
交戦略を模索しており、それを挫折させたい米英に「はめられた」感じだ。歪
曲した報告書を、歪曲した出し方で発表する。これが諜報界(軍産、外交官)
やその傘下のマスコミの手法だ。

http://www.dw.com/en/berlin-rebukes-spy-agency-bnd-for-criticism-of-saudi-arabia/a-18895596
Berlin rebukes spy agency BND for criticism of Saudi Arabia

「サルマン国王は痴呆症だ。数か月以内に、ナイーフ皇太子に王位を譲るだろ
う」「原油安は、若く未経験なサルマンが産油政策をコンサルタントに頼り切
りにした結果の失策だ」「シーア派のニムル師の処刑を決めたのも若いサルマ
ンだ」「若いサルマンの自動車の隊列が通るために道路を封鎖したことが、昨
年9月にメッカで2千人の巡礼者が死亡した圧死事件の原因だ」などなど、味
噌も糞も一緒にした、すべてサルマンが悪い的な歪曲報道が、米英などのマス
コミから流されている。

http://www.chicagotribune.com/news/sns-wp-blm-saudi-comment-c2e48e82-b60e-11e5-8abc-d09392edc612-20160108-story.html
Saudi Arabia has bigger problems than Iran

 このようなサルマンたたきの誹謗中傷が席巻するということは、逆に、サル
マン親子の対米自立策がそれだけ成功しているということだ。軍産複合体は、
自分たちが支援しているナイーフ皇太子らサウジの対米従属派がサルマンにや
られて不利になっているので、サルマンたたきを激化していると考えられる。
サウジ王家の内紛は、今年が山場かもしれない。引き続き注目していく。



この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/160206saudi.htm




●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)

◆日銀マイナス金利はドル救援策
http://tanakanews.com/160203boj.php
【2016年2月3日】米連銀が日銀に求めていることは「ドルと米国債、米
金融システム)へのテコ入れ」だ。日米間の金利差の拡大、ドル高円安、日本
から米国への資金流入などが起きるなら「まともな」マイナス金利策でなくて
もよい。日銀が実際にとった策は「マイナス金利」のイメージだけが喧伝され、
銀行が日銀に預ける当座預金の金利はプラスのままという、銀行の経営に配慮
する内容となった。

◆英国がEUに残る意味
http://tanakanews.com/160127uk.php
【2016年1月27日】きたるべき米国の金融崩壊は、世界的な金融危機や
不況を引き起こすが、長期的に最も国力が低下するのは米国自身だ。英国は、
米英同盟を国家戦略にできなくなり、EUに残るしかなくなる。こうなってか
ら英国がEUと交渉しても何も引き出せず、EU内で今よりずっと低い地位し
か与えられずにEUに吸収されてしまう。だから英国は、米国が金融危機を再
発する前に、早くEUと交渉し、できるだけ有利なかたちでEU残留を決めたい。

◆ドルの魔力が解けてきた
http://tanakanews.com/160113bank.php
【2016年1月13日】中国を筆頭とする実体経済の悪化、米シェール産業
の行き詰まり、中央銀行群の金融テコ入れ策の弾切れなど、いくつもの危険な
動きが激化している。米国など先進諸国の株や債券がいつ不可逆的に暴落して
も不思議でない。英国の銀行は最近、顧客に対し「手持ちの株や社債を早く売
却した方が良い。パニック売りの状態になってからでは遅い」と忠告している。
モルガンスタンレーやバンカメも、似たような警告を発している。