2016年2月6日土曜日

ロスジェネとは

知恵蔵2015の解説

ロストジェネレーション

ロスト・ジェネレーション(ロスジェネ)。直訳すれば「失われた世代」。本来は、第1次世界大戦後に活躍したヘミングウェイフィッツジェラルドフォークナーなど米国人作家に代表される世代を指し、「迷える世代」「喪失の世代」などとも訳される。「朝日新聞」が2007年の年始特集で、バブル崩壊後の「失われた10年」に社会に出た若者たち(25~35歳)の実態を連載。この世代に多いフリーターニート、ひきこもり、派遣労働者、就職難民たちを総称する言葉として用い、次第に広がっていった。08年5月には、同世代の手による『ロスジェネ』(かもがわ出版)も創刊され、それと前後して雇用・経済の問題とこの世代とを結びつけて論じる時評も増えた。彼らはバブルの残像を知りながら、学卒時に就職氷河期を迎え、グローバル化新自由主義経済が加速させた「格差社会」の中に投げ出される。その数は、2千万人弱。雇用機会を均等に与えられなかっただけでなく、長期の経済不況下にあって、非正規から正規雇用、再就職といった再チャレンジの道も閉ざされているため、最も割を食った「貧乏くじ世代」とも言われる。08年の金融危機による「派遣切り」の被害者も、非正規雇用者が多いこの世代に集中。上の世代からは、内向きで覇気がないなどと批判されがちだが、インターネット世代でもある彼らは、家族・地域・会社といった伝統的共同体とは別の「見えない他者」との緩やかな連帯を求める傾向が強い、とも指摘される。また、政治には無関心と見られていたが、07年4月に行われた統一地方選では多くのロスジェネ議員が誕生し、政界に新風を吹き込んでいる。
(大迫秀樹 フリー編集者 / 2008年)

やっぱり危ない! 狙われる日本の医療 堤美香 

やっぱり危ない! 狙われる日本の医療 堤未果 
「皆保険は薬価から切り崩される!」  
TPPの本丸ともいわれてきた医療。国民皆保険制度は守られるのだろうか。

・「国民皆保険制度はTPP後も堅持する」
という政府発表を鵜呑みにしてはいけません。
安倍首相が仰るように制度の形そのものは残りますが、
中身は形骸化してアメリカ型医療になっていくからです。
WHOや国境なき医師団などがTPPによる薬価高騰を批判していますが、
日本の皆保険が崩れていく入り口も恐らくここからでしょう。
1月7日にTPP協定条文の暫定仮訳が公開されました。
例えば「透明性及び腐敗行為の防止」の章を見てみます。
ここでいう「透明性」という言葉は、国際貿易条約では、
「利害関係がある人たち、つまり企業や投資家を意思決定プロセスに参加させる」
という、彼らにとっての透明性という意味。
例えば薬価決定プロセスへの製薬会社の介入が拡大されれば、
「この価格はおかしい、フェアな競争が阻まれる、非関税障壁だ」
と異議申立てをすることができるようになるのです。

・アメリカの医産複合体による日本への圧力は、1980年代の
中曽根政権時代(1985年の日米市場志向型分野別協議:MOSS協議)
からここ数十年続いています。
世界一の薬消費大国で、かつ新薬を税金で継続的に買ってくれる
国民皆保険制度がある日本は、医療市場としては大変儲かるので欲しくて仕方ない。
だから皆保険制度は残したままTPPで薬価を抑える規制を外し、
もっと高く、もっとたくさん買ってもらおうという寸法なのです。

・・・政府とマスコミは「医療費が増えた」「財政がもたない」
と騒ぎますが、その最大の原因が割高な海外からの新薬だという事実は
伏せています。
実はTPP問題では、並行して進んでいる国内法の改悪もセットで注目
しなければなりません。
TPPで儲かる外資と医療費を抑制したい財務省の利害が一致しているからです。
この4月から、混合診療の範囲を拡大する「患者申出療養」が導入されます。
国内での混合診療範囲の拡大は、
TPPと同じ方向を目指していることに注目してください。

・保険収載が前提という歯止めなしに混合診療を拡大すると、
経済的理由で病院に行けない人が増えるので、一時的には韓国のように
国の医療費は下がりますが、その後アメリカのようにER(救急救命室)
がパンクし、生活保護受給者が急増。
結局、企業は儲かりますが医療財政は悪化するでしょう。
実はこの状態を作る道はTPPだけではありません。
TPPによる外圧と同時並行で、選挙で選ばれてもいない民間議員が、
横から「国家戦略特区」で規制緩和を進め、
最後に政府が中から混合診療の拡大を押し込んでくる。
今、この3方向で進めてきているのです。
国家戦略特区では、今まで禁止となっていた病院の株式会社経営も
認められるようになる。
これも、今までずっと日本医師会などが反対してきたことですよね。

・戦略特区が怖いのは、特区から日本全国に広げる前提だということです。
TPPはアメリカが批准できないかもしれないけれど、喜ぶのはまだ早い。
医産複合体は保険をかけて、特区や内部からの規制緩和をセットで進めているのです。
これに多くの国民が気づいた時、チャンスが生まれます。
なぜか?
国家戦略特区は自治体単位なのでまだ止めることができるんです。
自治体には医師会もあるし、町の弁護士もいれば患者さんもいる。
この『TPP新聞』を読んだ方が、住んでいる地域の役所に行く、
県議会議員、市議会議員に問い合わせるという小さなアクションから、
変化を起こせます。

・皆保険や農協など、TPPで狙われているものが象徴するのは、
「株主至上主義」と対局にある価値観です。
その根幹には、日本人の持つ「お互いさまの精神」がある。
TPPの問題は、単なる貿易条約や経済利益ではありません。
これは私たちが人間としてどちらの価値観をベースに
未来を作るのかの選択です。
日本が守ってきた宝や世界に誇れるものを、
もう一度見直すチャンスでもある、非常に価値ある取り組みですね。

ジャーナリスト 堤未果(つつみ・みか)
東京生まれ。NY市立大学大学院修士号取得。
国連、証券会社などを経てジャーナリストとして独立。
著書に『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)、
『沈みゆく大国アメリカ2〈逃げ切れ!日本の医療〉』(集英社新書)
など多数。
『政府は必ず嘘をつく 増補版』を2016年4月に発刊予定。
TPP新聞#4 http://tpphantai.com/info/20160127-tpp-shimbun-vol04/
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