2016年3月15日火曜日

東芝の栄光はどこに

日本の家電メーカーがまさかアジア系の企業に売却されるなんて
これもグローバリゼーションの1つの現象ととらえれば何も不思議ではない。
<白物家電>アジア系メーカーが再編主導 東芝毎日新聞 3月15日(火)20時6分配信

 東芝は、冷蔵庫や洗濯機などの白物家電事業を中国の大手家電メーカー「美的集団」に売却する方向で最終調整に入った。かつて世界市場を席巻した日本の白物家電だが、アジア系メーカーはコスト競争力を背景に攻勢を強めていて、日本勢は太刀打ちできなくなった。シャープも台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の下で再建を目指す考えで、日本勢の「技術力」と「ブランド力」を狙うアジア系メーカーに、切羽詰まった日本メーカーが事業売却を余儀なくされた形だ。【片平知宏】

 「白物家電はイノベーション(技術革新)の余地が大きい」。ある中国電機メーカーの日本法人関係者はアジア系メーカーが買収攻勢を強める背景を指摘する。これまでアジア系メーカーは安価な人件費を元に、新興国市場を中心にコスト競争力で飛躍してきた。

 しかし、新興国の景気停滞が長引く中、今後は先進国への進出を目指す。電機業界のアナリストは「日本メーカーの冷蔵庫の大容量化技術などや先進国を中心に世界の市場で成功したブランド力は、アジア系メーカーがもっともほしい部分だ」と分析する。

 実際、アジア系メーカーは知名度のある企業を次々と傘下に収めていった。中国のハイアールが2012年にパナソニック子会社の三洋電機から冷蔵庫事業などを買収したことを皮切りに、米GEの家電部門も買収。シャープも鴻海から週内にも出資を受けることが最終決定する見通しだ。パソコンもNECが、中国の聯想(レノボ)グループと事業統合した。

 さらに、今後到来が想定される全てのモノがインターネットにつながるIoT時代では、家電から得たデータを利用した新たなサービスの登場によって家電の買い替えが進む可能性が高い。その時に日本メーカーの持つ技術やブランドを活用したいとの思惑がある。

 一方、国内でも産業革新機構が、東芝の白物家電部門を切り離してシャープと統合して再生する計画もあったが、シャープが鴻海傘下に入る見通しとなったことで頓挫。アジア系企業が「将来的な収益源」と考える白物家電も、再建を進める今の東芝には「重荷」で、海外企業との売却交渉を加速せざるを得なくなった。

 今後、IoT時代が本格到来しても「日本の電機メーカーの多くは、IoTを乗せて新たなサービスを展開するための白物家電を失っていることになる」(同アナリスト)。白物家電の世界市場では、アジア系メーカーがさらに勢いを増しそうだ。

 ◇キーワード・美的集団

 エアコンや洗濯機などを手がける中国の大手家電メーカー。「Midea(ミデア)」ブランドを展開している。2014年12月期決算の売上高は約2兆6000億円、最終(当期)利益は約2200億円だった。

 1968年に創業者の何享健氏を中心に設立。当初はプラスチック加工などを行っていたが、金属加工や発電機事業などを経て80年に家電に参入した。エアコンに強く、売り上げの約5割を占める。英国調査会社ユーロモニターによると、2015年はエアコンの市場占有率(シェア)は17.7%で世界2位。白物家電は4.6%で同2位。アジア太平洋地域に限れば白物家電のシェアは10.5%で首位に立つ。

 ◇アジア企業への有名電機メーカーの売却例

三洋電機 2012年に中国・ハイアールが冷蔵庫事業などを買収

GE   今年1月、米GEが家電部門をハイアールに売却と発表

シャープ 今年2月、台湾・鴻海精密工業からの出資受け入れの方針決定