2015年9月30日水曜日

キューバの労働組合

7月20日、キューバの首都、ハバナで米国の大使館が再開し、1958年の革命後、1961年に両国関係が断絶して以来、54年ぶりに国交が回復した。これに先立ち、4月11日には、米州首脳会議が行われたパナマで、ラウル・カストロ国家評議会議長が、米国のオバマ大統領と歴史的な首脳会談を行っている。同議長は、米国に相互の制度の尊重と経済制裁の撤廃を求め、国会では「今後、両国は関係正常化に向けて、長く複雑な段階に入る」と述べている。
 キューバは人口が約1100万人強と、カリブ海諸国では最大であるが、政治体制は共産党による一党支配が続いている。革命を主導したフィデル・カストロが、2011年までそのトップ(第一書記)を努め、その後は、今年で84歳になる実弟ラウル・カストロが国家元首の地位とともに継承をしている。経済面では、米国との断交後、旧社会主義陣営の強力な支援を受けていたが、旧ソ連崩壊後は低迷が続いた。米国による制裁はその後さらに強まり、個人の送金や移民の禁止措置も行われた。米国大リーグ入りを希望する選手は、家族との別れを覚悟して、深夜に密航船でマイアミに向かうような状況であったという。
 キューバの労働組合は、社会主義体制を支える柱の一つであり、ナショナルセンターであるCTC(キューバ労働組合中央組織)とその下の組織が公認されている。CTCは1939年に設立され、その後キューバ革命の実現に貢献した。現在、8つの産別、15の地方組織を持ち、全体の組織人員は公称約300万人である。現在の活動は、多国籍企業対策や、労働者の福祉や教育などの分野に力を入れている。CTCは、コミュニズム系の世界労連(WFTU)の主力組織の一つであり、ハバナにはWFTUラテンアメリカ・カリブ地域組織が置かれ、2006年にはWFTUの第15回世界大会が開催されている。米国との国交正常化について、CTCのニュースでは、9月2日付の記事で、「異なる体制の共存は社会主義革命の初期から主張していたこと」として国交再開を支持する一方、米国のこれまでの対応を不当な干渉の歴史として説明している。
 一方、今日のキューバでは、自由で民主的な労働組合をめざす反体制派の動きも以前より活発になっている。その中心は、CSIC(キューバ独立労働組合会議)であり、主力組織のCONIC(キューバ労働者独立全国連盟)、ならびにCTIC(キューバ独立労働者連盟)、CUTC(キューバ労働組合統一会議)で構成されている。CSICは2014年2月、ハバナで「自由、民主主義と社会正義の宣言」を発表、政府による自由な労働組合の抑圧を非難し、ILO条約に沿った結社の自由やストライキ権の尊重を求めた。2015年2月、CSICは、さらに「声明」を発表し、国内の労働組合組織に対して、ILO条約を踏まえた新しい労働法の制定を求める運動へ参加を呼び掛けるとともに、人権の尊重、結社の自由の実現する民主主義社会への移行をともに準備しようとアピールした。
 なお、キューバでは、今回の米国との国交回復に先立ち、経済面ではそれまでとは異なる動きも見られた。2011年の第6回共産党大会で、市場経済の部分的な導入が確認され、2014年には外資系企業とその投資を保護する新外国投資法が成立している。新しい情勢のなかで、キューバの労働運動が今後どのような展開を見せるかが注目される。