2016年1月23日土曜日

スマートシティ 欧米との落差

スマートシティ まだまだこれからの課題だとは思えますが

 

知恵蔵miniの解説

スマートシティ

ITや環境技術などの先端技術を駆使して街全体の電力の有効利用を図ることで、省資源化を徹底した環境配慮型都市。再生可能エネルギーの効率的な利用を可能にするスマートグリッド、電気自動車の充電システム整備に基づく交通システム、蓄電池省エネ家電などによる都市システムを総合的に組み合わせた街づくりが行われる。世界各地で実証実験が始まっており、日本でも京都府関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)、福岡県北九州市愛知県豊田市神奈川県横浜市で官民一体での実証実験が進められているほか、東京都が2020年までに実現を目指すとしている。(2013-1-28)

 

スマートシティ 「死語」の声ある日本と欧州の温度差 

 日本では「もはや死語」と揶揄(やゆ)する声すら聞かれようになったスマートシティ。しかし、世界を見ると、状況はまったく異なる。
 2015年3月10日から13日までフランス南部のカンヌで開催された、不動産業界で世界最大級のイベント「MIPIM 2015」(図1)。このイベントに参加すると、スマートシティやスマートビルが今後の重要なトレンドであり、その真価を発揮するのはむしろこれからであることが分かる。

図1  不動産業界の世界最大級イベント「MIPIM」(写真: MIPIM)
画像の拡大
図1  不動産業界の世界最大級イベント「MIPIM」(写真: MIPIM)

■大手デベロッパーが仕掛ける
 MIPIMでまず目立ったのは、大手デベロッパーや資産管理会社が手掛けるスマートコミュニティ開発プロジェクトである。国内では、不動産大手も手掛けてはいるものの、どちらかと言えば電機大手の看板プロジェクトであることが多い。 一方欧州では、MIPIMを見る限り、電機や情報通信ベンダーは前面に出ておらず、デベロッパーや不動産会社が主導権を握っている。
図2 仏Bouygues Constructionのスマートコミュニティ開発イニシアチブ「LinkCity」の概要と、関連するMIPIM2015のワークショップ・プログラムの模様(出典:日経BPクリーンテック研究所)
画像の拡大
図2 仏Bouygues Constructionのスマートコミュニティ開発イニシアチブ「LinkCity」の概要と、関連するMIPIM2015のワークショップ・プログラムの模様(出典:日経BPクリーンテック研究所)
 例えば、フランスのデベロッパー大手であるBouygues Constructionは、スマートコミュニティ開発イニシアチブ「LinkCity」を立ち上げ、欧州各地でプロジェクトを進めている(図2)。具体的には、英国ロンドン市内の再開発プロジェクト「Canning Town」、新規スマートコミュニティ開発ではスイス・バーゼルの「Erlenmatt West」やフランス・ニースの「エコバレー」の一画「Nice Meridia」などがある。
 それぞれの案件で、エネルギー企業、IT(情報技術)大手やネットベンチャー企業などと協業しつつ、欧州版スマートコミュニティの開発を進めている。Erlenmatt Westでは、コミュニティ居住者向けのアプリケーションをパートナー企業と開発・提供している。このアプリは、2015年3月初旬にバルセロナで開催された展示会「Mobile World Congress 2015」で、「つながる家の最優秀ソリューション」(Best Connected Home Solution)に選出された、と同社の担当者は胸を張っていた。
図3 英Canary Wharfグループによる講演「Is a smart city a happy city?」の様子(出典: 日経BPクリーンテック研究所)
画像の拡大
図3 英Canary Wharfグループによる講演「Is a smart city a happy city?」の様子(出典: 日経BPクリーンテック研究所)
 英国のデベロッパー・資産管理会社であるCanary Wharf Groupは、「Cognicity」をプロモーションした(図3)。Cognicityはロンドンでの開発プロジェクト「Canary Wharf」におけるスマート化の取り組みであり、「Cognicity Challenge」プログラムというベンチャー企業の発掘や支援を絡めた取り組みがユニーク。

 「交通機関の統合」や「つながる家(Connected Home)」など対象となるテーマがいくつかあり、「サステナブル(持続可能)なビル」も含まれている。