2016年4月17日日曜日

日本の高速道路

大地震でなんとなく見えてきたみたいです。

日本の宿命? 地震による高速道の盛土崩落 欧米より突出して多い利用率

乗りものニュース 4月17日(日)10時17分配信
 
なぜ「盛土」が必要なのか?
 2016年4月14日(木)に発生した熊本地震で、福岡と鹿児島を結ぶ九州自動車道は盛土法面(もりどのりめん)が崩落するなどの被害が生じ、通行止めになりました。

 高速道路の盛土は、大地震によってしばしば崩落しています。記憶に新しい事例としては、2009(平成21)年8月の駿河湾地震による東名高速牧之原SA付近(40メートルの区間が崩落)、2011(平成23)年3月の東日本大震災による常磐道・水戸~那珂IC間(150メートルの区間が崩落)があります。

 この盛土、そもそもどのような構造なのでしょう。

 盛土とは文字通り、「土を盛り上げて作った築堤」です。地表面に土を盛り、その上に道路を通すわけです。

 ただ土を盛っただけでは、経年とともに地盤の沈下を招きますから、まず必要に応じてサンドパイル(地面に砂を柱状に打ち込む)で水を抜くなどして地盤を改良したのち、土を盛って締め固め、その上に道路を造っています。盛土部には排水パイプを埋め込むなどして、土中の水分量が増え過ぎないようにされます。

 盛土が必要な主な理由は、高速道路の下に一般道路や水路を通すためです。地表面にそのまま高速道路を建設すると、一般道や水路はそこで遮断されます。しかし盛土をすれば、その下にあらかじめカルバート(コンクリート製の覆い)を造っておくことで、容易に往来を確保できるのです。
日本で盛土が突出して多いワケ
 実はこの盛土構造、日本の高速道路は欧米にくらべて突出して利用割合が多くなっています。欧米は都市を一歩出れば田園が広がっており、道路も水路もまばら。よって地表面と同じ高さに高速道路も建設され、一般道や河川との交差部のみ盛土や高架で持ち上げています。

 一方、日本は都市と田園地帯の区別が非常に曖昧で、平野部ではどこまで行っても家屋があり、密度の高い往来の確保が必要です。降水量も多いので水路の数も多く、「たまに道路を持ちあげる」程度ではどうにもなりません。よって、延々と盛土で持ち上げているのです。

 また起伏のある地形でも、斜面を削った土砂をその下の斜面に盛ることで道路平面を確保できますから、建設が容易です。日本の高速道路にとって、盛土は欠かせない構造なのです。

 当然、盛土にも耐震性は求められ、法面の傾斜角度や材料、締固めなどにさまざまな基準が設けられていますが、それでも盛土の耐震性は、高架構造などに比べると不確定要素が多くなります。かといってすべてを高架構造にすれば、工費は増大し景観的にも異物感が高くなります。盛土が大地震によってしばしば部分的に崩落するのは、「地震国・日本の宿命」といえるかもしれません。

 盛土は、工費が安いなどのほかにも利点があります。

 東日本大震災の際は、仙台東道路の盛土が津波の堤防および住民の避難場所として思わぬ活躍をしました。また崩落した場合、復旧が容易なのもメリット。なにしろ盛土は、基本的には「土を盛って締め固める」だけだからです。

 駿河湾地震のとき東名高速は5日間、東日本大震災の際は常磐道もわずか6日間で復旧し、世界から「ミラクル」と称賛されましたが、これが高架構造ならそうはいきません。1995(平成7)年阪神・淡路大震災で阪神高速が倒壊した際は、復旧に1年8カ月を要しました。それでも超高速復旧ですが。
清水草一(首都高研究家)