2010年3月2日火曜日

監視・政府改革委員会からの書簡

監視・政府改革委員会がビラー弁護士から入手した文書に基づいて、タウンズ委員長から北米トヨタ稲葉社長に回答を求める書簡が出されたました。これは一般新聞でも報道されましたが、同書簡の全容が分かったのでその和訳をしました。米国の証拠開示要求は厳しいものであり、これは大きな問題になって行きそうです。(フィリピントヨタ労組を支援する会T)xxx   xxx   xxxアメリカ合衆国国会下院第111国会2010年2月26日北米トヨタ自動車株式会社社長兼最高経営責任者稲葉 良睨 殿
拝啓
ご存知の通り、監視・政府改革委員会は、突然の意図しない加速の事態から発生した車のリコールに対するトヨタの取扱いに関して調査を実施してきております。本調査の一環として、われわれは、元トヨタの社内弁護士ディミトリオス・ビラー氏より文書提出命令に基づき提出された諸文書を入手・検討しました。われわれは、これらの文書を検討した結果、トヨタは、訴訟における証拠開示命令に応えて提出するよう法的に要求された関連電子記録を、意識的に留保していたという証拠を発見しました。これらの文書の多くは、原告が被害を受けた「横転」事件に関するものです。私は、ここに本書簡をもって、貴殿が自らこれらの記録を見直した上で、ここに記している主張に対する回答を提出するよう、要請します。
ビラー氏は、2003年4月以降2007年9月に至るまで、米国トヨタ自動車販売(TMS)の製造物責任グループにおいて統括弁護士でありました。これはきわめて上級の地位であり、この地位のもとで氏は、トヨタに対する何件かの最大の不法行為事件、とりわけ、四肢麻痺を含む重傷被害者に関係した「横転」事件の防御を主宰していました。
「TMCより文書/要開示電子的証拠(E-discovery)を入手する重大な必要性」と題する2005年9月1日付の社内覚書(訳注:本書簡原文に添付されている。)によって、ビラー氏は、訴訟におけるトヨタの電子文書不提出について懸念していることを、氏の上司に知らせています。「シアーズ」事件の関連証拠検索を実施中に、ビラー氏は、「MIK」という名のコンピュータ・データベースを発見しました。ビラー氏によれば、MIKはそれまで何年もの間実在していたものであり、「設計上の問題」および「問題解決のために用いられた対策」に関する情報を内包しているものです。MIKデータベースは、車両毎に、また構成部品毎に、検索出来るようになっています。また、MIK内の情報は、トヨタ自動車株式会社(TMC)によって維持されています。MIKから情報は、TTC[トヨタ・テクニカル・センター]によって、秘密の電子的「知見簿」(Books of Knowledge)にダウンロードされます。
ビラー氏によれば、この情報は「訴訟において一度も提出されていません」。さらに、ビラー氏は、「明らかに、この情報は、今日までに訴訟において提出されているべきでした」と、紛れもなく述べています。氏は、「TMCは、明らかに、自己の保有する関連情報/文書の全てを提出していません」と、付け加えています。最後にビラー氏は、「われわれは、eメールおよび要開示電子的証拠の保全、収集および提出を開始する必要があります」と締め括っています。
トヨタはeメールおよびその他の電子文書の保全、収集および提出を開始するよう要求されているとのビラー氏の結論にもかかわらず、そのご1年以上経っても猶、知見簿は依然として訴訟において提出されませんでした。実際には、トヨタは、原告弁護士が知見簿の存在を発見しそうな形勢にあったことを怖れて数百万ドルの和解をしたということを、ビラー文書は示しています。
例えば、2006年12月6日付のeメール(訳注:これも本書簡原文に添付されている。)に、ビラー氏は、「ペニー・グリーン事件」で150万ドルの和解に氏が同意した大きな理由は知見簿の開示を阻止するためであったことを、氏のトヨタの上司に説明しています。この事件は殊の外驚くべきものです。被害者のペニー・グリーンがトヨタ車の横転で四肢麻痺にされてしまった健康な若い女性であったからです。
文書はまた、ビラー氏が、トヨタの米国道路交通安全局(NHTSA)との相身互い(あいみたがい)の関係が発見されるのではないかと懸念していたことをも、示しています。ビラー氏は、2006年11月の社内eメール(訳注:これも本書簡原文に添付されている。)に、原告側弁護士ジェフリー・エンブロイが「TMAのNHTSAとの相当深い関係があることと、TMCがTMAおよびアライアンス社を通じてNHTSAとどのように交信しているかを知ってしまっている」と記しています。
最後に、ビラー文書は、突然の意図しない加速問題に対するトヨタの取扱を、多少照らし出しています。2005年6月送信の社内eメール(訳注:これも本書簡原文に添付されている。)の中で、ビラー氏は、トヨタの明白な関連証拠の収集および提出不実行に対する氏の懸念を表明しています。氏の覚書お中で、ビラー氏はトヨタの別の役員であるウェブスター・バーンズからのeメールへの回答を次のように書き込みしている。
「この訴訟を提起するぞという意向が示された時でも誰も驚かなかった。この問題[突然の意図しない加速]は、既にそれまでに多くの会議やTMS・TMC間の多くの文書のやり取りのテーマになっていたからであり、(誰かがそれら全ての文書を収集・整理し、また「会議」をメモしたのですか?もしもそうであったなら、会議に関する文書と情報はどこにあるのですか?[強調はビラーのコメントを示すもの] そして一連の対策案にTMCを引きずり出して働かせるための1試案として集団訴訟の可能性が持ち出された。」
要するに、ビラー文書は、訴訟における組織的な法律不尊重と日常的な法廷開示命令違反とを示しています。トヨタ車に関係する衝突での被害者たちは、トヨタが法廷で関連証拠の提出を怠った時、二度被害を受けたかもしれません。また、このことは、トヨタがNHTSAに対しても相当多くの関連情報を留保しているのではないかという、きわめて重大な疑問を提起するものです。
これらのおよび関連する争点に関するわれわれの調査の一助として、以下の質問にご回答下さい。
1.ビラー氏が氏の2005年9月1インチの覚書で表明した、知見簿を含む関連電子記録を提出する必要性に関する懸念に対応して、トヨタはいかなる措置を講じたか。
2.トヨタは知見簿の存在をNHTSAに開示しているか。もしも開示しているならば、何時、いかなる状況で開示したか。
3.トヨタは、不法行為事件における証拠開示の要請に応えて、何時全ての電子文書の提出を開始したか。
4.知見簿は訴訟における証拠開示要請に応えて提出されているか。もしも開示されているならば、その開示された事件名を列挙して下さい。もしも開示されていないならば、それが開示されなかった理由を説明して下さい。
5.もしも知見簿およびその他の関連電子記録が、訴訟の過程で要求通りに提出されていないということが真実であるならば、これらの関連証拠が検討されるよう全ての終結済み事件を再開するよう申立てますか。
本照会に対する貴殿のご協力のほどよろしくお願い致します。上記質問に対する貴殿のご回答を、2010年3月12日(金)正午12時までにご提出下さい。この要請に関して何かご質問がある場合は、委員会スタッフのジョン・アーリントン電話202-225-5051までご連絡下さい。
敬具
(署名)委員長 エドルファス。タウンズ
米下院監視委員長「トヨタの内部資料隠匿の証拠を発見」http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14104720100228
 [ロサンゼルス 26日 ロイター] 米下院監視・政府改革委員会のタウンズ委員長は26日、裁判所に提出を求められていた内部資料をトヨタ自動車が繰り返し隠匿していたことを示す文書を入手したことを明らかにした。
 トヨタの元社内弁護士が委員会に提出した文書で、同社が人身障害に関わる裁判で「Books of Knowledge」と呼ばれる重要なエンジニアリング情報の開示を回避するため、原告側と和解していたことが明らかになったとしている。
 同委員長は北米トヨタの稲葉社長にあてた書簡で、この文書は「訴訟における組織的な法律違反、恒常的な裁判所命令の無視があったことを示している」とし、トヨタに対し説明を求めた。
 さらに、この文書は「トヨタが(米安全当局に対し)相当量の関連情報を提出しなかったのではないかとの非常に深刻な疑問を呈している」とした。
 トヨタの幹部は下院監視・政府改革委員会の公聴会で、安全性問題をめぐる調査に全面的に協力していると証言しており、この文書は同社にとって大きな打撃となる可能性がある。
 トヨタはタウンズ委員長の書簡を受けて発表した声明で「企業が裁判で一部の資料提出要求に異議を唱えるのは珍しいことではない」として、自社の対応の正当性を主張。
 「こうした考え方に沿って、当社は競争にかかわる企業情報と企業秘密を維持するために適切な措置を講じている」とし、製造物責任訴訟などで「的確に対応してきたと確信している」と表明した。
 同委員長は、トヨタの技術者が秘密の「Books of Knowledge」を電子媒体の形で保管しており、同文書はこれに複数回言及していると指摘。この「Books of Knowledge」には、すべての車種と部品に関する設計や試験データなどが記載されているという。
 委員長が稲葉社長にあてた書簡によると、この文書では、裁判で原告側の弁護士が「Books of Knowledge」の存在を発見する懸念が高まった際にトヨタが数百万ドルの和解金を支払ったことが示されている。
 同委員長が照会した文書は、トヨタの製造物責任に関する法務部門を2003年4月から2007年9月まで率いていたディミトリオス・ビラー氏が前週、委員会に提出した。文書は6000ページから成り、同氏がトヨタに対し不当解雇などの理由で裁判を起こした際に証拠として提出されていた。