2016年4月16日土曜日

教科書採択騒動

記録に留めさせていただきました。

以下転載


皆さま    高嶋伸欣です

1  今回の騒ぎの始まりは、三省堂による謝金の事実が判明したこと
でした。その後、『読売新聞』などが次々と「まだある、まだある」と三省堂以外の教科書会社による類似の事例を報道したことなどで騒ぎが大きくなり、文科省の対応が問われることになったのでした。 この時、関係者の間では「なぜ『読売』ばかりなのか?」という疑問が広がり、「教科書会社から聴取してそうした情報を知り得た文科省内の誰かが意図的に情報をリークして騒ぎを広げようとしているのではないか」と囁かれたりしていました。 もし本当にその通りであるなら、情報リークをした人物は現在の状況を思惑通りとして、ほくそ笑んでいることでしょう。 2. ともあれ、そこで文科省が問題にしたのは、謝金のことだけ
でなく、検定中の教科書(白表紙本)を現場教員など部外者に見せ
たことが、文科省の指導(検定終了までは検定の内容を外部に漏ら
さないこと)に違反しているというものでした。

3. そこで、文科省は小・中学校教科書を出版している22社に対し、
1)検定終了前に白表紙本などを部外者に見せたことがあるかどうか
2)見せたことがある場合に謝金等を渡していないかどうか
の2点について2009~2014年度の分を正直に申し出るように、という
一斉調査を今年1月に実施したのでした。

4. その結果、設定された報告期限の後に追加報告された分も含め、
22社の内の12社が教員など延5159人に見せ、その中の10社が延4006
人に謝礼を渡していたことが判明したとして、文科省から公表されま
した。
5。その上で、これら白表紙本を見た公立学校の教員延4525人、その内
で謝金等を渡された延3507人について、この間の教科書採択に関与し
たかどうか、さらにそのことで採択に影響が及んだかどうか、当該の
教育委員会に調査するように、文科省から求めたのでした。
 その報告が各教育委員会から寄せられた結果、文科省は、上記4525
人の内で採択に関与したのは約約1000人、謝金を渡された818人が、
教科書比較資料作りなどに関与していたことが判明した、と公表しました。

6.それと同時に文科省は、これらの関与によって教科書採択が影響さ
れたことはなく、公正性を疑わせる行為はなかった、と3月31日に結論
づけていたのでした。
 これでとりあえずこの件はひと段落か、と思われました。

7.ところが、4月12日に公正取引委員会が突如、この件で22社に対し
ての「容疑」調査着手(各社代表を呼び、必要資料の提出と、各社代
表からの聞き取り・尋問をする日程などの通告)に踏み切ったのです。

8. 公取が調査に着手するのではないかという前触れはありました。3
月の参議院予算委員会で公取委の杉本和行委員長が、この問題について問われ、謝金などによって「教科書発行者間の公正な競争が阻害される恐れがある場合、独禁法上、問題になる」と、答弁していたのです。

9. 文科省の対応の様子を見ていた公取が、いよいよ自分の出番と受け
止めて、行動を起こしたというわけです。

 10.そうした公取の動きを待ち望んでいたことを臆面もなく表明したの
が、前回紹介した馳大臣の「不正はなかったと言われている報告につい
ては『本当かな』と、懐疑的な思いで見ています」という記者会見での発言です。
 しかも、同大臣は続けて、仮に公取から排除命令(独禁法違反という
判定)が出された場合に教科書発行者の指定取消の処分が「当然、あり
うると考えています」とも述べたと、各紙が伝えています。

11. ただし、不正が発覚したら「教科書発行者の指定取消しもありうる」
旨の発言をこの件で最初にしたのは、馳大臣ではありません。前出の教科書各社からの報告を要求していた今年1月8日に、義家弘介文科副大臣が、教科書会社社長たちを集めた会議で、述べたと各紙で報道されているのです。

12. 義家弘介氏は、2011年の沖縄・八重山地区教科書採択で育鵬社版公
民教科書の採択に竹富町教委が反対して再協議が必要になった際、相矛盾
する2つの関連法律(採択の最終権限は個々の教委にあるとする地方教育
行政法と、教科書無償措置の適用のためには採択地区内で同一の教科書を
採択しなければならないとする教科書無償措置法)の内、後者が優先する
という誤りの法律解釈を採択地区協議会会長の石垣市教育長の玉津氏にFAX
で個人的に伝え、その解釈に従った玉津氏の行動で、状況を混乱させた元凶
として、知られる人物です。

13.その後、義家氏は安倍政権下で、文科省政務官になると竹富町教委に圧力を加え続けますが、最後は竹富町教委の主張に合わせた法律改正に追い込まれ、文科省側の”敗北”を決定的なものにしてしまった元凶でもあります。 この過程で判明したことは、義家氏に複雑な教科書検定や採択の制度が正確には理解できていない、ということでした。

14. その義家氏が今度は副大臣に登用されたものの、学校教育担当ではありながら、安倍首相以上に歴史に不案内で歴史修正主義の動きに乗ることもできず、八重山問題の”失策”などから事務方にも軽んじられているとのことでした。

  15. そこへ、『産経新聞』が1年遅れで「学び舎」版中学歴史教科書攻撃を始めました。同教科書を採択した国立大学付属学校が採択理由を公表していないのは不当とする言いがかり報道(今回になって俄かに騒ぎ立てたり、他の科目についても同様であるのに、記事では毎回のように、「これらの付属校が慰安婦について唯一触れている「学び舎」本を採択した」旨強調しています)です。何しろ、高校教科書の検定結果公表を各紙が一斉に報道している3月19日朝刊のトップ記事が、この言いがかり記事だったのです。『産経』の執着ぶりは異常で、他紙は後追いをしていません。 その『産経』の言いがかりを応援したのが義家副大臣です。4月4日のことでした。この日、義家副大臣が東京学芸大附属中学世田谷校と御茶ノ水女子大付属中学校に直接出向き、教科書採択理由を公表するように「指導」したのです。その様子を『産経』は写真付きの記事で詳しく伝えています。お茶大付属の場合は「学び舎」本を採択していません。カモフラージュの意味でしょう。

  16.この程度のことで副大臣が出向くのは以上です。『産経』に煽られる形で、3月31日に文科省からは国立大学附属学校に同趣旨の文書(通知)だ発出されていたのです。それだけでも、義家副大臣の差し金を推測させるものです。 それに加えての4日のパフォーマンスです。いかにも「副大臣が直接に出向くほどの重大事なのだぞ!」との印象付けと、自分の存在アピールのねらいが、見え見えです。

  17.義家氏は、かつて竹富町教委を「恫喝」するために、政務官として石垣島にある同教委事務所に直接出向いたことがあります。その時、自分で「これまでの電話やメールによる文書のやりとりではなく、政務官が直々に出向いてきたことを重く受け止めてもらいたい」と発言したのです。沖縄では今もこの発言が物笑いのタネとして語り継がれています。 議論で説得できないからこけ脅しに頼る、という特性は相変わらずのようです。

  18. 義家氏の論理のお粗末さを裏付ける話は、枚挙の暇がないくらいです。 最近では、義家副大臣をトップとする省内の「18才選挙権引き下げに伴う主権者教育推進策」に、「子どもがお手伝いなどで家庭生活に参加するように取り組む」との項目を大真面目で盛り込んだ事例があります。 これがなぜ主権者教育に結びつくのか? 義家氏は「家庭を守らずに地域を守れるか。地域を守れずに日本を守れるのか」と意味づけをしているそうです(『朝日新聞』4月1日)。道徳教育にかこつけた「愛国心」の強調というのであれば、安倍首相も喜ぶことでしょうが、これではまるで戯言です。 18才選挙権と言えば高校生レベルの話であるはずです。高校生を「子ども」と表現しているところからずれています。ましてや選挙権行使による大人としての存在を社会が認知しようとの時期の話題です。 「ヤンキー先生」で名を馳せた義家氏は自分の高校時代の「ヤンキー」状況を前提に教育を論じているかのようです。

19. 話があちこちに広がってしまいましたが、<公取批判>の為に指摘しておきたかったのは、こうした不明朗、不可解な政治的、個人的権力欲などの思惑や権限行使の下で今回の公取による22社への「容疑」調査が強行されるに至った、とう概況の説明です。

20. このような胡散臭い思惑や権限行使に基づいた公正取引委員会の行動ですから、到底”公正”に実行されるとは思えません。 そのように判断する根拠となる事実を、これからさらに列挙していきます。その前に、この不明朗な構造を明らかにしたいと思い、ついつい長い説明になってしまいました。 19.次の <公取批判>(3)は、育鵬社は対象にならない見込みの上記3の2)=謝礼金の件だけに「容疑」を限定する公取の調査方針は、間違いかつ違法ではないか、という話題です。    今回も文責は高嶋です     転載・拡散は自由です

    

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