2016年6月18日土曜日

部活動と休養



中学高校の部活動に休養日設定を 文科省が提案へ

高浜行人
2016年6月4日05時30分


 
 文部科学省は3日、中学と高校の部活動について、休養日を設けるよう学校に求める案を大筋でまとめた。顧問の教員の負担を軽くし、生徒の健康を保つため、過剰な活動を適正化するのが狙い。文科省は来年度にもガイドラインをつくり、休養日がどれくらい必要かなどの基準を初めて示す方針だ。
 文科省は4月、貧困家庭や障害のある子らへの対応が増えて教員がさらに忙しくなっているとして、業務負担の軽減策を考える省内の会議を設置。中でも部活動を中心的な課題として検討してきた。2014年公表の国際調査では、中学教員の部活動の指導時間が日本は週平均7・7時間と参加国平均の3倍を上回って最長。文科省は、生徒にとっても部活以外の多様な体験に影響が出かねないと判断した。
 案では休養日を設けるほか、複数の顧問を配置することなどを学校に求める。さらに国の施策として、教員、生徒、保護者を対象に部活動の実態を調査する▽休養日はどれくらいの日数が適切かなどをスポーツ医科学の視点から研究する▽調査や研究の結果を盛り込んだガイドラインをつくる――と明記する方針。
 ログイン前の続きまた、文科省によると中学の団体競技の大会の際、引率が教員に限られて外部指導者にはできないケースが多い。これらは日本中学校体育連盟や多くの都道府県連盟のルールが一因として、国や教育委員会が連盟側に改善を要請する、としている。
 文科省は6月中にも案を公表し、全国の教育委員会などに通知して改善を求める。さらにガイドライン作りに向け、来年度予算の概算要求に調査や研究の費用を計上する方針だ。文科省の案やガイドラインに強制力はないが、休養日の日数などを具体的に示すことで、学校側が自発的に守るようにしたい考えだ。
 案には部活動のほか、様々な調査に回答する業務の負担感が強いことから、国の調査件数を減らすことも盛り込む。学校給食費の徴収を教員にさせないよう、会計ルールの見直しやシステム整備を教育委員会に求める見込みだ。
■行き過ぎに危機感、実効性は不透明
 部活動に休養日をつくろうと、文科省が本腰を入れる。部活動の顧問教員の負担が「ブラック化している」との指摘に加え、部活動が行きすぎると生徒の健康を害しかねないという危機感があるからだ。
 休養日の議論はこれまでもあった。1997年、運動部活動の実態を調べた旧文部省の有識者会議や、大阪市立桜宮高校の生徒自殺を受けた13年の文科省の有識者会議は、いずれも休養日が大切だと報告した。
 01年の調査では運動部活動が週6日以上の中学校は5割超。全教員が顧問になるのが原則の中学校は3分の2に上った。練習試合や大会などで土日も活動があるケースは多く、負担が大きい状況はいまも大きく変わらないと文科省はみている。部活動は生徒の自主的、自発的な参加で行われるものとして教育課程外に位置づけられ、学校の裁量に任せられていることが背景にある。
 教員の負担は深刻だ。土日など勤務時間外に指導をしても、手当は国の基準で「4時間程度で3千円」にとどまる。
 文科省は近く出す案で、部活動の大幅見直しを打ち出し、基準づくりにも乗り出す。ただ、強制力がない分、どこまで実効性のある施策を打ち出せるかは不透明だ。(高浜行人)

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