2016年8月15日月曜日

希望の国福井



<トリビアふくい・12>有効求人倍率2位

 ◇地場産業好調 賃金水準課題に
  •  

 厚生労働省のまとめた5月の有効求人倍率(季節調整値)は、県内が1・83倍と、東京都の2・03倍に次ぐ全国2位だった。全国でも上位常連県として知られるが、大企業が多いわけでもないのに、なぜこれほど高い倍率なのだろうか。
 敦賀市で7月、来春卒業予定の高校生を対象に「サマー求人企業説明会」が開かれた。参加企業数は前年度より3社多い61社。ある経営者は「景気が良くなり、就職希望者がモノづくり企業を中心に県外に結構流れている」と漏らした。労働者が会社を選ぶ「売り手市場」に直面し、県内企業は人材確保に苦労している。
 ◇
 有効求人倍率は、求職者数(有効求職者数)1人あたりの求人数(有効求人数)を示したものだ。福井県の5月の実績は、北陸新幹線の開業効果にわく石川県(1・64倍)や、トヨタ自動車の本拠地・愛知県(1・63倍)を大きく上回った。
 産業別では医療・福祉、眼鏡などの製造、繊維工業などの新規求人が好調だった。福井労働局は「県内の雇用失業情勢は改善が進んでいる」と分析する。
 ただ、有効求人倍率の高さが、地域経済の真の実力とは言い切れない。県内の求人数は、北陸3県で最少の1万9302人。あくまで「求職者数の割に求人数が多い」結果といえる。
 “数字のマジック”がプラスに働いている面もある。仮に求人数が同じならば、求職者数が少ないほど倍率は高くなる。実際に5月の県内の求職者数は1万567人と、10年前から1割余り減っている。
 原子力発電所の再稼働が見通せない敦賀市では、求職者数減少の一因に、原発作業員の県外流出が挙げられる。厚生労働省の担当者は「福井県の高い有効求人倍率は、製造業の好調さと求職者数減少が組み合わさった結果」と説明する。
 ◇
 また、2015年度の最低賃金(時給)が732円にとどまるのも課題だ。有効求人倍率1位の東京都(907円)との差は大きく、同じ北陸地方の石川県(735円)と富山県(746円)にも負ける。
 地場産業の眼鏡枠や繊維関連のメーカーなどが好調で、働き口は見つけやすいものの、賃金水準はいま一つ――。統計データから、そんな実像が浮かび上がる。

0 件のコメント: